一定の条件を達成すれば、喘(ぜん)息(そく)や糖尿病などの病気を持っていても加入できる保険が相次いでいる。医師も患者が条件を守ることで体調管理につながると期待している。


医師ら「門前払い転換歓迎」「治療の動機にも」

 保険は、加入者が保険料を負担し合い、死亡や病気、けがなどをしたときに給付を受ける「助け合い」だ。

 6月、喘息患者を対象とした生命保険3種が発売された。▽入院保障▽死亡保障▽入院・死亡保障で、喘息で入院したときだけでなく、他の病気やけがをした場合も支払われる。ただ、▽過去5年以内に喘息で入院したことがない▽発作は年に5回以下▽現在、喘息以外の病気で治療を受けていない▽過去5年以内にがんや糖尿病などの治療を受けていない--の4項目すべてにあてはまることが条件だ。喘息の治療中でも加入できるが、保険料は健康な人に比べて1~8割増しになっている。

 発売元のジブラルタ生命保険(本社・東京都千代田区)は「病状の違う患者さんに一律の条件を出すことは難しい。症状を管理できている人に絞った。しかし、将来的には加入の間口を広げていきたい」と話す。


強い要望

 喘息患者が入れる保険の開発を要望したのは、専門医のグループだ。「保険に入れない」という患者の要望を受け、2年前から生保18社に働きかけた。全国で推定450万人と推定される喘息患者に、厚生労働省研究班の指針に基づいた治療の普及や継続を促す狙いもある。メンバーの一人の大田健・帝京大教授(呼吸器・アレルギー学)は「治療法の進歩で、喘息死や発作による入院は減少している。治療を続ければ、ほとんどの患者が健康な人と同じように生活できる。治療を継続する動機付けにもなる」と説明する。

 患者団体「国立病院機構相模原病院アレルギーの会」(神奈川県相模原市)の丸山敬子さん(59)は「かつて、喘息の薬を使わなくなって5年が経過しないと入れない、と言われた。これまで慢性患者にとって、事実上の門前払いだった」と述べ、専用保険ができたことを歓迎する。

 また、喘息の患者団体「NPO法人エパレク」(東京都港区)の矢内純子事務局長(58)は「選択肢が増えるのはよいと思う。しかし、自分の病状を適切に管理し普通に生活できている人には、健康な人と同程度の保険料で普通の保険に入れる方向に変わってほしい」と期待する。


保険料に目安

 糖尿病、脳梗塞(こうそく)、腎不全などの持病に悩む人が入れる保険は00年以降、増えている。今回の喘息用保険のような、特定の病気を前提にした患者専用保険も登場した。

 大同生命(本社・東京都港区)は、糖尿病と高血圧患者用の保険を販売し、死亡時や肢体不自由などの高度障害に見舞われたときに支払っている。小山恒輔・商品企画1課長は「中小企業の経営者が主な顧客で、生活習慣病でも入れる保険の需要が高かった」と説明する。

 以前は、健康状態の悪い人には特別料金を付加して受け入れていたが、更新できないのが現状だった。また、医師の診断や会社の審査を経ないと保険料が分からないという課題もあった。これに対し、患者用保険では、自分の血糖値や血圧から保険料の目安が分かるように工夫されている。


内容よく確認

 とはいえ、患者ならだれでも加入できるわけではない。この保険では、▽糖尿病や高血圧で入院したことがない▽インスリン注射をしていない--などの条件がある。これは他の保険も同様で、病状が軽い場合に限定されていたり、一定期間、入院していないことが条件になることが多い。保険料も通常より高いのが普通で、契約内容をよく検討することが必要だ。

 この流れについて、堀田一吉・慶応大教授(保険学)は「自由化で競争が厳しくなる一方で、市場は飽和状態になり、新規契約数は減少している。市場開拓のため、排除してきたハイリスクの人に目を向けるようになった。保険会社には挑戦だが、病気の人ほど保険を必要とする。可能な限り受け入れるべきだろう」と指摘する。

出典:毎日新聞